マルメロはサイネリアを見つめ聞きます。

「サイネリアは何故、そこまでしてくれるの?」


サイネリアは目を大きく開きマルメロを見つめます。

マルメロは真剣な表情です。

サイネリアは、唇を噛み締め涙を流し始めます。

辛そうで、悲しそうな表情をみせます。


そんなサイネリアの表情にマルメロまで、辛くなってきます。


しばらく沈黙が続いた後、サイネリアは小さな声で言いました。


「友達でしょ…」


今度は、マルメロの目が大きく開きます。


「マルメロと私は友達でしょう。友達が危ないのよ?助けたくなるのは当たり前じゃない」


マルメロの息が上がってきました。


「私達は、似た者同士よ。マルメロの気持ちが分かる。それに、私の気持ちも分かるでしょう?」


マルメロは何も言えません。


「マルメロと私は負けず嫌いよ…。そして、意地っ張り。でも…。まさか、まさか…」


サイネリアは声が出ません。
涙が溢れて止まらないのです。
サイネリアは辛そうな声で言います。


「こんな事になるなんて…!」


マルメロはサイネリアを見つめたまま。


サイネリアもマルメロを見つめます。


「何で買収なんか…したのよ。マルメロ…」


サイネリアは涙を流しマルメロにもたれ掛かります。

「マルメロ…。ごめんなさい」


マルメロは時間が止まったような感覚。


サイネリアの一言、一言がマルメロの心に響きます。

負けず嫌いで意地っ張りな性格が邪魔をして、関係がおかしくなっただけ…。


マルメロは顔が熱くなり、目と鼻がうずうずとしてきます。


母親の死を受け入れた時と、同じ感覚です。


サイネリアはマルメロに抱き着いたまま静かに泣き続けます。


マルメロの頬に一粒の雫が流れました。


そして、言うのです。


「私の主人がね、いつも言ってたの」


サイネリアは黙ったまま耳を澄まします。


マルメロは、少し微笑み言いました。


「遊びが過ぎるぞって」


その言葉を聞いたサイネリアは、マルメロを抱きしめる力が強くなります。


マルメロはサイネリアの背中を撫でてあげます。


「主人の言う事を、ちゃんと聞いておけば良かったわ…」

サイネリアの啜り泣く声が部屋に響きます。


マルメロは、何故か安心感と幸福感で満たされていました。


マルメロには、友人が2人もいた。

マルメロの夢は大きく叶っていました。


母親、ハンノキ、ストケシア、そこにサイネリアも。

マルメロは、サイネリアに伝えます。


「私は幸せ者よ」


サイネリアの背中を撫で、マルメロは幸せな気持ちで言いました。