貴族の邸が立ち並ぶ一角。
一際大きな邸の屋根の上に、一人の少女が空を見上げていた。
唇に薄い笑みを浮かべながら、少女は夜空に手をのばすと星を掴むような仕草をする。
幼き日、あの空に瞬く星を何度となく掴もうと試みたことがあった。
けれどそれは全て失敗して、呆れる母の表情はよく覚えている。
少しの懐かしさを感じながら、少女は笑みを消すとどこまでも続く闇を見つめ、自虐的な笑みを浮かべた。
やっとこの世ともおさらばだ。
この世に生を受けてから十数年。自分の人生は散々だった。
物のように売買され、虐げられる日々。
身体には無数の痣が残り、醜い以外に何と言えるだろう。
大っ嫌いだ。こんな世界。
“奴隷”なんて地位を作ったこの世界が。
望んでもない奴隷になった自分たちを見下した、人間どもが。
自分が奴らと同じ種族だと思うと吐き気がする。
心底嫌そうに顔を歪めた少女だったが、すぐに満面の笑みを浮かべると空を振り仰いだ。
「――さようなら」
一歩、足を踏み出す。
その先に地面はなく、少女の身体はまっさかさまに落ちていく。
彼女は満足げに微笑むと、静かに瞼を閉じた。
一際大きな邸の屋根の上に、一人の少女が空を見上げていた。
唇に薄い笑みを浮かべながら、少女は夜空に手をのばすと星を掴むような仕草をする。
幼き日、あの空に瞬く星を何度となく掴もうと試みたことがあった。
けれどそれは全て失敗して、呆れる母の表情はよく覚えている。
少しの懐かしさを感じながら、少女は笑みを消すとどこまでも続く闇を見つめ、自虐的な笑みを浮かべた。
やっとこの世ともおさらばだ。
この世に生を受けてから十数年。自分の人生は散々だった。
物のように売買され、虐げられる日々。
身体には無数の痣が残り、醜い以外に何と言えるだろう。
大っ嫌いだ。こんな世界。
“奴隷”なんて地位を作ったこの世界が。
望んでもない奴隷になった自分たちを見下した、人間どもが。
自分が奴らと同じ種族だと思うと吐き気がする。
心底嫌そうに顔を歪めた少女だったが、すぐに満面の笑みを浮かべると空を振り仰いだ。
「――さようなら」
一歩、足を踏み出す。
その先に地面はなく、少女の身体はまっさかさまに落ちていく。
彼女は満足げに微笑むと、静かに瞼を閉じた。