夜香花

 おずおずと、真砂の後ろから娘が祠に入ってくる。
 入り口の薄い格子戸を開け放ったまま、真砂は板の間に座った。

「あ、あきと申します」

 ぎくしゃくと娘が名乗り、真砂の前に手を付いた。
 里のしきたりとはいえ、ここは花街ではない。
 水揚げに形式などないし、わざわざ名乗る必要もない。
 相手が頭領であるため、名乗ったのだろう。

 ちらりと顔を上げ、真砂と目が合うと、娘は慌てて顔を伏せた。

 真砂は女子の憧れでもあるが、同時に恐るべき存在でもある。
 女子に限らず、里の者全てがそうなのだが。

 全身かちこちに固まっている娘に、真砂はため息をついた。
 生娘は苦手だ。

 元々他人など、どうでもいい真砂である。
 生娘だからといって、ことさら優しく接することもない。

 故に、相手は苦痛だろうし、真砂自身も楽しくないのだ。
 初物狩りだと声をかけられたので出てきてみたものの、あまり興味もなかったので、すでに誰か捕まえているだろう時刻に来たのだ。

 ちなみに初物狩りとはいえ、数人で娘を手籠めにすることはない。
 初めの相手が決まったら、後の者は引き揚げるのが決まりだ。