夜香花

 日がとっぷりと暮れてから、真砂は里の外れの小さな神社に向かった。
 神社といっても、神主などいない。
 小さな祠があるだけの、寂れたところだ。
 夜など、真っ暗で誰もいない。

 が、今は釣り灯籠に灯が入っている。
 小さな灯なので、そう明るくもないが、元々乱破は夜目が利く。
 僅かな灯りで十分だ。

 真砂が祠の前に出ると、小さな階(きざはし)の前にいた少女が顔を上げた。
 胸の前で拳を握りしめ、落ち着きなさそうに、目を泳がせている。

「……弥平のところの娘か」

 娘を一瞥し、真砂は呟いて辺りを見回した。

「誰も来ていないのか? 俺が初めか」

 静かに言う真砂に、娘はこくりと頷いた。
 目には、若干の怯えが見える。

 やれやれ、と真砂はため息をついた。
 そう早く来たわけでもないのに、己が一番とは。
 皆、遠慮したな、と心の中で思い、真砂は階に足をかけた。

 初物狩りとは、初潮を迎えた里の娘の、いわば水揚げだ。
 里の娘たちは、初潮を迎えると、指定された日の夜に、この祠に来る。

 里の男たちは、娘の初物を狙って、ここにやってくる。
 初めに娘を捕まえた男が、娘の初物を奪うのだ。