夜香花

「……っくくく。はっはっは」

 堪えきれなくなったように、真砂が大笑いした。
 これにもまた、清五郎は目を見開く。

 初めてである。
 真砂がこのように、楽しそうに笑うとは。

 身体を折って笑う真砂に目を奪われていた清五郎は、しばらくしてから、ようやく我に返ったように、足元の苦無を引き抜いた。

「真砂の苦無だな。やったのか?」

 持ち手に細い荒縄を巻いた苦無を見つつ、清五郎は苦無を差し出した。
 それを受け取りながら、真砂は軽く首を振った。

「いいや。大方俺の家で見つけたから、取っておいたんだろうさ」

 相変わらず楽しそうに、真砂は苦無をしまう。
 清五郎は少し考え、ざっと周りを見渡した。

「そういえば、あまりの馬鹿さ加減に気づかなかったが、あいつ、ああ見えて、やっぱりただ者じゃないな。苦無が飛んでくる直前まで、気配を感じなかった」

 意外そうに言う清五郎に、にやりと真砂が口角を上げる。

「おや、お前も大したことないな。俺はちょっと前から気づいてたぜ。だからこそ、とっととあいつらをさがらせたんだし。いたら邪魔だからな」

「真砂は特別だぜ。お前の能力は秀でている」

「またそんなことか。そんなこと何度言ったって、俺は自分がこの党を率いているとは思ってないぜ。いい加減に諦めろ」

 何度言っても、真砂は頭領の地位を厭う。
 実際真砂の能力は、里のどの者よりも秀でているし、党の誰もが真砂のことを頭領と認めているのに。

 清五郎は一つ息をつくと、深成の去ったほうを眺めた。