夜香花

「そうじゃな……。わしなどからしたら、お前さんがおったほうが、頭領のためには良いと思うが」

「俺のため?」

 真砂が、訝しげに顔を上げた。

「頭領の世話を焼けるのは深成だけ。捨吉の言うとおりでしょう。頭領、腕が一本というのは、なかなか不便なものですぞ。今まで当たり前に出来ていたことも出来なくなります。今後は誰か、お側に置いたほうが良いでしょう」

 真砂が渋い顔をした。
 御免被る、という顔だ。

「深成が帰るとなると、千代姐さん?」

「千代を傍に置いておけというのか?」

「千代姐さんなら、喜んで引き受けてくれそうですけど」

「とんでもない話だ。大体誰が来ようが、相手にせんから同じだろう」

「でも頭領。だったら飯とか、どうするんです」

「飯ぐらい作れる」

 ぷい、と顔を背ける真砂に、捨吉は困った顔をした。
 おそらく真砂の言うとおり、誰が真砂の元へやって来ても、今までと変わらぬ態度を取られるだろう。

 片腕になったからとて、ころっと人の世話になるような真砂ではない。
 人の世話になるぐらいなら、死んだほうがマシだとか言いそうだ。