夜香花

「わらわは別に、この暮らしに不満はないもんっ」

「……お前、俺のこと考えてないだろう。言っておくが、あそこは俺の家であって、お前の家ではないぞ」

「いいじゃん。もう真砂だって慣れたでしょ」

 ふぅ、と息をつき、真砂は刀を帯に突っ込んだ。
 深成がすかさず、てててっと傍に来る。
 置いて行かれないためだろう。

 置いて行ったところで、ここは里の中だし、家まですぐだ。
 そんな必死にくっつくこともあるまいに。

 そう考えた途端、真砂の脳裏に、昨夜の深成の様子が蘇った。

「何か、気になることでもあるのか?」

 何の気なしに聞いてみる。
 深成が、ん? というように顔を上げた。

「お前こそ、やたらと警戒してるじゃないか。何故俺の傍を離れない?」

 一瞬だけ、深成は足を止めた。
 が、躊躇いを振り払うように、たたっと真砂の傍らにつくと、ぎゅっと真砂の袖を握る。