夜香花

「何とか、部屋の中に入り込む方法はないもんか」

 回廊から部屋に入るには、どうしても周りにひしめく侍の前を通過しないといけない。
 屋根伝いに行こうにも、庭にいる侍に見つからずには行けない造りだ。

 しばし考えていると、不意に部屋の障子が引き開けられた。
 一人の武将が姿を現す。
 名のある武将なのだろう、身に帯びている甲冑など、周りの者よりも一際豪華だ。

 武将は詰めている侍に向かって、何かを指示した。
 どよ、と一同がざわめき、皆何かを言い合っていたが、やがてばらばらと散っていく。
 部屋の前には、武将と五、六人の侍が残るだけになった。

 真砂は素早く梁を伝って、何人かの侍の動向を探った。
 その間に、千代は部屋に走り寄っていた。
 いかにも慌てているように、髪を振り乱して辺りを見回す。

「おまつ! どこにいるの!」

 千代の声に、先程部屋から出てきた武将が近づいてきた。
 眼光鋭い、壮年の武将である。

「侍女殿か。早く落ち延びなされ。もうじきこの屋敷は、炎に包まれようぞ」

「な、なんですって? どういうことです。お方様は……」