夜香花

「血が必要なんで?」

 捨吉の言葉に、深成が、ささっと真砂から遠のいた。
 真砂の性格から言うと、それこそ躊躇いなく深成の血を流しそうだ。

「そういうわけでも、ないと思うがな……。曇らすと見やすいかも、と思っただけだ」

 刃を凝視しながら、真砂が言う。
 何が何でも血が必要なわけではないのだ、とわかり、安心して深成はそろそろと、また真砂の傍に戻った。

 危険がないとわかると、真砂が何を見ているのかが気になる。
 元々深成の懐剣なのだ。
 己に関することなのかもしれない。

 刀を火に翳して、まじまじ見る真砂と同じように、深成も身を乗り出した。
 じぃっと刃を見つめる。

「ん~……? 何が見えるの?」

 深成の目には、特に何も見えない。
 ただ少し曇った刃が、火に炙られているだけだ。

「家紋……かなぁ。刀身に紋があるなんて、何か曰く付きですと言ってるようなもんだ」

「家紋?」

 真砂の手元を見ながら、深成が言う。

「お前はこれを、爺から貰ったのか?」

「そうだよ」

「直接か?」

 執拗な真砂の問いに、深成は首を傾げた。