夜香花

「う~ん……。わかんないなぁ。あんたよりも、年上だよ」

「そんなこと、言われんでもわかっとる」

「清五郎って人よりも上」

「……それもわかっとる」

「……」

 沈黙が落ちる。
 一拍置いて、真砂の額に青筋が立った。
 同時に深成が、びくっと小さく飛び上がる。

「馬鹿にしてんのか!」

「ちっ違うもん~っ! ほんとにわかんないんだもんっ!!」

 怒鳴る真砂に、深成は素早く傍の捨吉の後ろに隠れて叫んだ。

「わらわ、あんまり周りに男の人っていなかったんだもんっ! 比べようがないじゃん」

「誰かと比べんでも、大体の歳ぐらい、わかるだろう! ずっと一緒にいたんだろうが!」

「爺の歳なんて、気にしたことなかったもん~」

 捨吉の後ろから、きゃんきゃんと言う深成だったが、はた、と思いついたように動きを止めた。

「あ、殿とおんなじぐらい? もうちょっと上……かなぁ」

「殿?」

 やっと出た答えらしい答えに、真砂は眉を顰めた。
 深成の言う『殿』とは、以前仕えていた屋敷の主---細川の殿様のことだろう。
 果たしてあの殿様は、いくつだったか、と考える。