夜香花

「自分の思うとおりに動こうと思っても、大抵の者は他の者の行動も気になるものです。一人で考え、一人で動くことは、相当な能力が必要です。それに、一人で動くには、普通の者は情が邪魔になります。頭領のように、情報共有だけして一人で動くとなるとなおのこと。頭領の考えを参考に、周りの者も動きます。その中で相手が邪魔になった場合、共倒れにならないためには、味方だろうが斬り捨てる覚悟が必要。普通の者は、そこで情が湧き、共倒れになるのがおち……」

「だから、必要以上につるむな、と言うんだ」

 しん、と沈黙が落ちる。
 深成は、真砂を見つめたまま考えた。

 何故真砂は、これほどまでに他人を信用しないのだろう。
 この情のなさは、何故なのか。

 ふと、昨夜千代が言ったことが思い出された。
 『情ある乱破は自滅する』……。
 そう考えるようになる何かが、昔にあったのだろうか。

「ま、よろしい。頭領が頭領の地位を厭うておるのは、今に始まったことではない。それでも皆、頭領を慕っておるのだから。それはそれとして、今はお前様じゃよ」

 長老に促され、深成は我に返った。
 考えつつ、口を開く。

「んと、そうそう。こういう山の中の里って、どこも似たようなもんなんじゃない? 罠については、真砂がお方様を殺したときに、自分で乱破だって名乗ったじゃん。だから、まぁ……里には罠が仕掛けられてるだろうな、とは思ってた」