夜香花

 頭領の家、ということで、真砂の家を探し当てたのではないはずだ。
 深成に対して、真砂は己が頭領だと言ったことはないし、家だって、別に頭領としての居を構えているわけでもない。
 深成の言うことは、真砂にとっては答えになっていないのだ。

 だが深成は、は? という目で真砂を見た。

「あんたこそ、わかってなさすぎ。ちょっと見れば、あんたが頭領だってことぐらいわかるよ」

 真砂の眉間に、深く皺が寄る。
 長老は興味深そうに、深成をじっと見た。

「俺は頭領じゃないと、何度言えばわかる」

 渋面で言う真砂に、深成はたじろいだ。
 里の者ほど真砂を恐れない深成だが、真砂が本気で怒ると、さすがに怖い。
 こそ、と少しだけ身を引きながら、深成は助けを求めるように、長老を見た。

「頭領は、頭(かしら)の地位を厭うております故なぁ。けど、この者も言うとおり、頭領の能力も並大抵ではありませぬ。他の者が一目でわかるほどの優れた能力の持ち主を、頭に掲げたいと思うのは、力で頭領を決めてきた我が党にとっては、当然のことと諦めてくだされ」

 ふぁふぁふぁ、と呑気に笑う長老に、真砂はちらりと目を向けた。
 少しだけ眉間の皺が薄くなる。

「……わかっている」

 ぽつりと呟いた真砂に、清五郎は驚いた顔をした。
 散々説得してきたのに、頑として己が頭領である、とは認めない真砂だ。