「分かったわ」

 美咲は水玉模様の傘の持ち手を握り、ゆっくりと引き出す。

 ズリズリ……。

 傘は破れもせずに、無事に抜くことが出来た。

 しかし、何かがゴミの山から一緒に引きずり出された。



「きゃああああーっ」



 美佳が悲鳴をあげた瞬間は、まだ美咲にはそれが何か、分かってはいなかった。
 改めて確認すると、引き出されたのは、動物の死骸のようである。

「嫌ねぇ……」

 娘の前で、同じように悲鳴をあげる訳にはいかない。

 美咲は母親として、美佳をなだめた。

「もう、大丈夫だから。それよりもその傘、美夏のだったの?」

「たぶん……」

「多分って。名前とか書いてないの?」

「うん。書いてないの。変わった模様だったから。でも、私のだと思う」

 美佳は傘を広げたり、眺めたりして、自信無さ気に答えた。

「仕方ないわね。じゃあ、家に持って帰りなさい」

 美佳を先に帰すと、美咲は再びゴミの山に目を向けた。

 死骸は猫だった。特に臭いはしない。

 目玉がぽろりと飛び出しているが、僅かに繋がっていた。体はペッチャンコで、カリカリに乾燥していた。