「……誰からだろ?」

私は、リンさんの横顔をジッと眺める。…本当に普通にしてたら絶対にもっと、モテてたのに……。

「……………」

私が、リンさんを眺めてるとリンさんの顔色が急に変わった。何か、ヤバいっていうか…。どうしよう。というか…?

「どうしたんだろう?」

リンさんが、チラッと私を見てきた。私は、軽く微笑むと、顔を少し赤くした…、でも…。直ぐに、泣きそうな顔に戻して私と合った視線をズラした。

「…………?」

私は、さっきと態度が違うリンさんに少し不思議に思いながらもコンビニの仕事を地味にしていく。

私が、レジのボタンを押して遊んでいると、リンさんがコンビニに戻ってきた。

「ごめんね?優さん。ちょっと、アラタから電話が来てさ」

「どんな事を話したんですか?」

「ちょっと…えっと。色々…」

「真由美さんの事ですか?」

私の口が勝手に動いて、真由美さんの名前を出した。真由美さんって名前を出すと、リンさんは分かりやすく動揺した。

「えっ、えっ?まっ、真由美?だっ、誰かな…」

「……………」

完全に、真由美さんって女の人を知ってる。

「しっ、知らないな。俺、真由美って名前の友達いないし…」

「……そうですか。でも、アラタさんは真由美さんって人を知っていますよね?……メールを見ていましたから。……『秘密にしててゴメンね……』と、書いてあるメールを」

「…………?!」

リンさんは、えっ?と、いう顔をする。

「それに、私と真由美さんの名前から間違えましたし……」

「……………」

「一体、真由美さんって誰なんですか?」

「……………」

「言えないんですか?」

「………ごめん」

「そうですか。無理に、言えとは言ってないんで、気にしないで下さい」

「……優さん、もしかしてイジケてる?俺達の秘密が知れないから」

私が……。イジケてる……?……でも、そうなのかもしれない……。

「ごめんなさい。…教えてもらうまで、私はイジケます」

「えっ?イジケてるの?!」

「……ダメですか?」

「ぃゃ、嬉しいなって思って…」

「…………?」

何で……?

「イジケるって事は、俺達に少しづつ心を開いてるって事だと思うんだ」

……そうなの……?変わらないと思うケド……。

「……………」

「それと、………」

「何ですか?」

「真由美の名前を、もう二度と出してほしくないんだ。俺の前でも、勿論アラタ達の前でも。……お願い出来るかな?」

笑顔でそう言ったリンさんの目は、笑ってなかった。

「………はい」

「…ありがとう」

「いぇ、誰にでも知られたくない過去はあります」

「優さんも?」

「………へっ?」

「優さんも、俺達に知られたくない過去はある?」

「……………」

そりゃあ、勿論ある……。でも、あるって言って一体何が起こるか分からない。ココは、紛らわそうかな……?

「そっか……。あるのか」

「えっ……?」

「優さんの目見てたら分かるよ」

「そうですか……」

「でも、……。俺が言うのも、あれだけど。過去を気にしてたら前に進めないよね。だから、……少しづつでも忘れられるように頑張らないと」

「……そうですね」

「うん…。例え、忘れられないような過去だったとしてもね」

「………………」

私に言ってくれてるのか、自分自身に言い聞かせてるのか……。分からない……。一体、リンさん達の過去には何があったのだろうか……。

と、思っても私に、リンさん達の過去に足をつっこむ権利等ない。だから、聞かない…。まぁ、若干聞いてしまったけれど…。

その後、リンさんは分かりやすく、ぎこちない空気を放ちながら、もう時間だから帰るね?と、言って私の頭を優しく撫でてからコンビニから出て行った。