私は、契約書をちゃんと見たのか……?バイト内容には、一切、一言も。

『変人の相手もする』

とは、書かれて無かった筈。なら、何故。私は、こんなにも面倒くさい変人共の相手をしているんだろうか…?

「優、僕は考えた!デートは、ゲームセンターなどで、遊びまくろうじゃないか!」

「アラタさんが、勝手に決めて下さい。私に、いちいち報告しないで下さい」

コンビニで、2人の男女がデートプランを計画してるように見えるけど。絶対にありえない。一方的に、言われてるだけだ。

「何だと?デートと、いうモノは、相手の人と一緒に、どこで何をいつ、するのかを決めるモノだ!バカッ!」

「バカで、結構です」

「じゃあ、変人だ!優!」

「少なくとも、アラタさんにだけは、言われたくないです」

「僕は、変人じゃない!変態だ!」

「……………」

もう、どっちでも良いじゃん。変人変態アラタさん。

「何か、言う事は、無いのか?!」

「話掛けないで下さい。帰って下さい」

「なぬっ?!せっかく、会いに来てやったんだぞ!愛の巣ならぬ、会いの巣!」

「……………」

「何か、言う事は、無っ…」

「いっらっしゃいませ」

アラタさんを、ガン無視して、今入ってきたばかりの、お客様に笑顔で接する。アラタさんは、私の目の前で手を振る。
そんな光景は、あまりにも可笑しくて…。

「おーい!優ー?」

「……………」

ニッコリ微笑んだまま、私は口角一つも動かさない。

「おーい!優!優!優!優!」

「お客様、他のお客様の迷惑なので、ヤメて下さい」

「……………」

アラタさんは、シュンッとしてコンビニの角に行って立った。

「これ、下さい」

お客様が、肉まんを指差した。…今、5月なのに、何で肉まん食べるんだろ?ちょっと、不思議…。って、リンさんも、そうだけど…。

「こちらで、よろしいでしょうか?」

「はい」

「合計───。───」

チラッチラッとアラタさんが、視界に入る。お願いだから、あんな無表情で天井を見るのはヤメて欲しい。…笑いが止まらなくなる。

「ありがとうございました。またのご来店お待ちしております……」

他のお客様が、いなくなった途端にアラタさんが私に近寄ってくる。

「もう、良いだろ!」

「アラタさん。無表情で天井を見るのはヤメて下さい。…途中で、噴いたらどうするんですか…」

「優の笑った顔が、見れるのなら僕は、ずっと無表情で天井を見てるぞ」

すると、アラタさんは、さっきと同じ様に無表情で天井を見始める。

「………っ」

我慢出来ないよ…。

「……………」

「ぅ……。ふっ……。アハハハ……!」

私は、バイト中なのに耐えきれずに大笑いをしてしまった。

「ふっ……。やっと笑ったな……」

アラタさんが、急に大人な顔で微笑んで私を見る。……急な事で、私の心臓がドクっと動いた。

「わっ、私だって笑いますよ……。人間なんですから……」

「そんな事は、知ってる。優を動物として、見たことは…多分無いような気がする!!!」

「今、多分って言いましたよね?!」

「いっ、言ってないぞ!」

「アラタさん、目泳ぎましたよ!」

「…………?目が泳ぐ……?なんだ?目には、手足がはえてるのか?!初めて知った!優は、物知りなんだな!」

「……………」

この人は、バカ何だな。変人何だな。うん、今、確実に確証した。この人は、変人だな。