僕の周りには男子同級生達が囲んでる。後ろは壁。周りの皆は見てみぬフリ。騒がしい廊下。
先生達には、見えない死角の角。
いつもの事…。10分位我慢すれば、それで終わる。…大丈夫だ。いつも通り、抵抗しないで殴られてれば…。

そう思っていたのに……。

「本当に、お前キモイ。女みたいな顔しやがって!キモッ」

「ぃ………」

一人の男子同級生が、僕のお腹を殴る。
好きでこんな顔で、産まれた訳じゃないのに…。

「コイツ、本当に抵抗しないよな!先生にバレねぇし、もっと殴らね?」

「さんせー!!」

5、6人の男子一気に暴力をふられる。人数なんて、気にしてられない。それ位、……。余裕が無いんだ……。

「ギャハハハ!!」

痛い……。痛いよ……。何で僕が……。こんな顔に、産まれてこなければ……。

「………?!レン?!ちょっと!アンタ達ヤメッ……。わっ………」

カナが、僕が暴力ふられてる事に気付いて助けに来てくれたけど、同級生に肩を押されて尻餅ついて倒れる。

「カナ!!……ちょっと、アンタ達、ヤメなさいよ!レンとカナに謝って!」

普段怒らないチカが、怒った。

「誰が謝るかっての!ブース!」

「こっちくんなー!」

「正義のつもりかよ!そういうの、一番ウザイからーー!」

「アハハハ!」

チカは、カナを起き上がらせて何度も僕を助けようとする。だけど、男の子には叶わなかった。こんな光景見たくない…。

「バーカ!」

「死ね!キモイよー!」

「オカマ!」

「ちょっ、早くヤメなさい!」

ドンっと、カナがまた倒れる。
僕は、何で皆を不幸にさせる事しか出来ないんだよ…。自分の無力さに、悔しさが込み上げてくる。

「ぅっ……うぅ……」

僕の、目から涙が流れる。…もう、嫌だ…。僕の顔のせいで…。こんな…。

「お前ら、キモーイ!泣いてるしー!…それに、弱いな!恥ずかしいな!男のクセ…」

「ふっ………。くっ、アハハ………」

リーダー格の男子が僕の目の前から急に消えた。いや……急に倒れた、の方が表現に合ってる。さっきまで騒がしかった廊下がシーンと静かになる。
静かな廊下に、女の子の笑い声が響く。……確か…この女の子、転校生の……。

「弱いのは、どっちよ。アンタ達の方が、全然弱いわよ。恥ずかしいわよ。見てて、惨めよ?アンタ達」

ふっと、転校生の女の子は鼻で笑う。

「はっ?黙れよ」

「今のアンタ達は、人間として恥だわ。同じ人間と思いたくない位にね」

大丈夫?っと、カナとチカに手を差し伸べる転校生の女の子。

「「ありがとう」」

「……………」

強い。僕も、こんなに強くなれたら……。

「男のクセに、1人じゃ何も出来ない。…女みたいな顔して何が悪いの?可愛いじゃない。アンタ達と違って、見てるだけで吐きそうな顔より全然良いわよ」

「なっ……!?テメェ!」

「あっ……。本当の事言い過ぎた……。私の悪癖なの。本当の事を言い過ぎる」

リーダー格の男子は、転校生の女の子に殴りかかった。転校生の女の子は、無表情でリーダー格の男子のパンチをよけて、殴り返す。そのパンチは、リーダー格の男子の顔面に命中した。

「がっ…………」

「おっ、おい!大丈夫か?!」

「ふぅ……。男のクセに弱っ!?ビックリした……。君、大丈夫?」

転校生の女の子は、僕の顔を覗き込む。霞んでない、綺麗な瞳は…見てるだけで僕の鼓動を早く激しく動かした。

「大…丈、夫です……」

「格好いい!!アナタ凄い格好いい!!」

カナが、興奮状態で転校生の女の子に近寄る。

「えっ?何で?アナタ達の方が、格好良かった。…本気で、友達を助けようとした姿勢がね…。私、感動した」

「えへへっ………」

「ぃってぇな……」

「だろうね。お兄ちゃんから、教えてもらったの。弱い男なら、これだけで倒れるって」

「チッ………」

「いっ、行こうぜ……」

「あぁ………。こんなキモイ奴らに構ってたら、俺らが可哀想だ」

「よく言うわね……。そこの男の子が、モテるから僻んでたダケなのに」

「………ぇっ?」

「なっ、な訳ないだろ!言い掛かり女!行くぞ!」

リーダー格の男の子が、多分屋上方面に逃げていく。
助かった……。初めて、10分殴られなかった……。痛くない…。痛くない。