「ん?」

「曽根倉君って、椎名君の事 知ってるの?」

曽根倉君は、入学式の日、昔からの友達みたいに、椎名君に話し掛けていた。

曽根倉君は、にっこり笑って頷く。

「ああ。保育園の時からの、幼なじみなんだ。小1の時に あいつが引っ越しちまって、離れ離れに なっちまったんだけど、高校から また こっちに戻って来たみたいだな。」

「……椎名君って、昔から あんな感じなの?」

私の質問に、曽根倉君は顔を曇らせた。

「……いいや。昔は俺と おんなじで、明るい奴だった。」

曽根倉君は、椎名君が居るであろう、屋上の方角を、哀しそうな瞳で見遣った。

「この10年で、一体あいつに何が在ったんだろうな……。」