とっておきの恋

「あの…」

左側に人の気配を感じた。

「うぎゃっ!!!」

「おはようございます」

遠藤くんだった。

相変わらず小さい声で、気づかなかった。

「やだ、遠藤くん。いつからそこにいたの?」

「えー、10分くらい前ですかねえ。声かけたんですが、妄想されてたふうで返事がなくて…」



やだっ!!

遠藤くんたら、ずっと隣にいたの?

は、恥ずかしい…。



「あの、遠藤くん。つかぬことをお聞きしますが、あたし、どんなふうでした?」

遠藤くんは、校外学習のしおりに目を通しながら、やっぱり小さな声で答えた。

「えー、表現は悪いかもしれませんが、にやにやしてましたねえ。で、ちょっと独り言めいたことも。あとは手をばたばたさせながら『イヤー、そんなこと』と言ってました」

表情一つ変えず、遠藤くんは言った。