そしたら、安部くんがあたしのこと抱きしめた。

ちょ、ちょっとみんな見てるし…。

あたしは真っ赤になったまま硬直する。

「エリちゃん、俺ちゃんと謝ってなかったからさ。遠藤から聞いたよ。エリちゃん、俺や松原のことを考えて、一人で河辺に立ち向かおうとしてたんだって」

「うん、そうだよ。二人ともあたしの大切な人だもん」

「ありがとう、エリちゃん。俺さ、エリちゃんのことよくわかってなかったよ。エリちゃんは俺が思ってたより、うんと大人で、うんといい女だよ」

「やだ、今ごろ気づいたの。遅すぎるって」

安部くんはくすっと笑った。

そしてあたしのおでこにやさしくキスした。

「あーあ、なんだか急に惜しくなってきた。また俺とやり直さない?」

だからあたしはこう返す。

「安部くんがあたしのヒーローになったらね」