とっておきの恋

「持田さん、早くこのことを安部くんに伝えた方がいいです。だって危険すぎます。河辺くんはある意味狂っていますから」

遠藤くんの声が震えていた。

訴えるって脅された時、よほど怖い思いをしたのだろう。

「でも、あたし言えないよ」

「どうして? だって、自分の身に危険が及ぶかもしれないんですよ」

「だって、だって…。安部くんは本気で弁護士になりたいんだよ。犯罪被害者のために働きたいって夢があって。でもそれを邪魔するなんてことできない。安部くんは何も悪くないんだよ。もし、あたしが、このことを言ったら、安部くんは河辺くんに推薦を譲っちゃうかもしれない。そういう人だよ、安部くんは…」

「持田さん…」

遠藤くんはもう何も言わなかった。

あたしの強い意志を察したのだろう。

黙ってそのままあたしと別れた。