とっておきの恋

「あたし、もう安部くんに会えないって思ってた」

「あんなことがあったから」

「うん。あたし、安部くんの言うとおり最低だもん。カオリンにあわす顔ナイ」

「でも、エリちゃん気になってるんだろ。俺たちが中学の頃付き合ってたこと」

「うん」

きっと熱のせいだ。

あたしの頭の中にあることがすべて言葉として流れ出す。

とてもすらすらと、恥ずかしさなんてこれっぽちも感じずに。

「あたし気づいちゃったの。安部くんにとってカオリンは今でもいちばん大事な人だって。たぶん、あたしが逆立ちしたって絶対にかなわない。だからあたしね、やきもち妬いたんだ。こんなにあたしが安部くん好きなのに、あたしが入る隙はないって気づいちゃったし」

安部くんは黙って聞いていた。

「ねえ、安部くん。あたしって結構鋭いでしょ。あたし頭悪いけど、勘は鋭い方なのかもしれない。今回のことで気づいたよ。あーあ、長田に言われてた職業、カウンセラーにしようかな。心理学専攻してさ。文学部の心理学科だったら、数学できなくても大丈夫だよね。私立文系にしようかなあ」

あたしも自分が何を言ってるのかよくわからなかった。

でもあたしの口は止まらない。