とっておきの恋

「ねえ、安部くんは将来の夢ってあるの?」

「俺?」

「うん」

「俺は…」

窓の外でセーラー服の女の子たちが笑いあいながら歩いている。

椿の深緑が目にしみる。

「弁護士になりたいって思ってる」

意外だった。

だって、安部くんばりばりの理系だって思ってたし。

弁護士っていったら法学部じゃん。

あたしの視線に気づいて安部くん、少し赤くなった。

「理系なのにって思ってるんだろ」

「でも、すごいね。ちゃんと夢を持ってるんだもん。あたし焦っちゃうな」

「焦ることなんかないよ。エリちゃんはエリちゃんのペースでいけばいいんだから」

安部くんが目を細めてあたしを見た。

そして愛しそうにあたしの頬をなで、そっとおでこにキスした。