「不思議な事に演奏が止むと、ベースもピタリと鳴らなくなるのよ。演奏と関係が有るのかしら」


「ううぅぅん。どういう事だぁぁ」


 腕組みをして考え込む咲邪達。(覇龍は頭を抱え込んでいる)真夜中近くなったホテルの外は、ヒンヤリとして湿った空気が支配している。月が朧オボロに霞み、藍色の夜は不気味な程に静まり返っていた。


「こうなったらマキを起こしましょう」


 咲邪は思い立って電話を掛けるが、呼び出しメロディーが無情に響くばかり。どうやら彼女は、呼び出し音をバイブにして寝ているらしい。


「寝てたら無駄だ。アイツは電話位じゃ起きない。

 明日また電話するんだ」


 と斬汰。スッキリしない気分のまま、咲邪達は寝床に就いた。


〇※○※○※


「マキ、お早う!」


 朝になるのを待って、咲邪は早速電話を掛けていた。


『ああぅ。昨日電話貰ったみたいですねぇ、すいませぇん。寝てましたぁぁ』


 至ってノンビリとではあるが、済まなそうに彼女は言った。


「いや。こっちも真夜中だったし、気にしないで? それでね……」


 咲邪の言葉を遮ってマキが答える。


『咲邪さん、見えますよぉぅ。ライブの最中にぃ、溢れんばかりの魑魅魍魎がぁぁ……』


 寝惚けていた最初の頃とは違い、声のトーンを2つばかり上げてマキは言う。やはり咲邪達の読みは当たっていたようだ。


「あれはどういう事なのか、マキ解る?」


 暫く黙って考えていたマキは、また済まなそうに言う。


『すいません。目を凝らしてみましたがぁ、ここからでは映像が見えるだけでぇぇ……』


「ゼロは? 霊穴なのかしら」


『ゼロ君は至って普通にしてますぅぅ、ああっ!……』


「どうしたのっ? マキッ、ねえマキ?」


 咲邪は青ざめて聞いたが、マキの答えは無かった。


「どうしたんだ?」「何かあったのかぁぁ?」


 斬汰も覇龍も心配そうに様子を窺っている。