《改稿中》V系霊媒師「咲邪」†SAKUYA†《改稿中》

「それに霊の居る家からも暫く離れられるんだから、少しはゆっくり熟睡出来るんじゃないのか?」


 前田の睡眠不足を気遣っていた同僚は、不幸中の幸いだと肩を叩いた。


「いだだっ。しかしそうだな、有り難う。どうでもいいけどお前、見舞いはこれなのか?」


 前田が見やった先には同僚が持ってきたインディゴブルーマウンテンの箱が3ケース、牽引されている足の下へ重々しく積み重ねてある。


「そうだが? 嫌いじゃないよな?」


 目を閉じ、頭カブリを振った前田はそれ以上言葉を繋ぐのを諦めた。



  ガラガラガラッ



「アナタッ! 大丈夫なのっ?」


 実家に帰っていた妻が息急イキセキ切って駆け付けた。前田は強がって冗談を返す。


「ああ、この通りだ。大丈夫ではないが点滴のお陰で元気だよ」


「こんなになって元気なわけないでしょ! あらすいません、この度は有り難うございました」


 やっと同僚に気付いた妻は深々と頭を下げた。


「いや奥さん。命が助かってほんと、良かったですよね」


 妻は手提げポーチからハンカチを出すと目頭を押さえた。



〇※○※○※



「こっちか。ゼロ、近いのかぁ?」


 リードを力一杯引き、喉に食い込んだ首輪でぜぃぜぃ言っているのにも構わず、ゼロはまた一段と足を早めた。


「臭う臭うここから臭う。霊穴開きっ放し」


 ゼロの鼻先が向いているのは、真っ白で巨大な大学病院の入院棟だった。病院と言えば霊道の交差点とも言える場所。そこに霊穴が開いたとしても何の不思議も無い。


「咲邪ぁ、ベースの方はどうだぁ?」


 霊穴から霊が溢れているとすれば、それを察知して咲邪のベースが鳴り出す筈だ。