「あの2人って、仲悪いの?」

さりげなく隣りに座ってくれた井方君に訊ねると、彼は「なんで」と小さく笑いながら聞き返してきた。いつもの無邪気な笑い方とは違って、少しだけ嫌そうな、苦い笑い方だった。

「そういう風に見えたから……」

城島君といっ君へと視線を戻す。

いっ君が遊園地の時に城島君に必要以上に冷たく接したのを見た時、少しだけ気持ちに霧がかかってしまったけれど、先ほどの光景を見て、2人の印象は決定づけられてしまったようなものだった。

井方君は、顔に掛かりかけていた前髪を両手で分けながら、少しだけ猫背になる。

「悪くはない……と、思う」

井方君は小声でそう言いながら、自分に膝に肘を突く。

彼の日に焼けていない両腕には相変わらず赤色のリストバンドが巻かれていて、その上にはやはりパワーストーンの類と思われるブレスレットが飾られていた。

「今年は城島だけクラスが違うから、ちょっと距離が離れちゃってるけど……。
去年は城島といっ君、よく絡んでた」

「井方君も1年の時2人と同じクラスだったの?」

眉をひそめていると意外に人相が悪いな……そんなことを井方君に対して思いつつ、私は小声で訊ねる。

「うん。俺と城島といっ君と浦和と赤坂とー…あと持田……」

井方君は律儀に指を折りながら名前を上げていく。

その名前を聞いているうちに、「1年の時のクラスメート」たちが全員コートに立てる訳ではないということを知った。

「赤坂何やってんじゃボケ!」

乱暴な怒声が館内に響きながらも、ゲームは続行される。

少しでも遅れをとったら名指しで怒鳴られるという緊張感の中、城島君といっ君の2人はまったく怒声を浴びなかった。