芳野君が大声で2年生たちを振り分けていく。

呼ばれなかった生徒たちはすぐに壁へと移動し、呼ばれた生徒たちは素早くコートへと入って行った。

合図がないうちからセンターサークルへ城島君といっ君が向かい合って立つのを見て、私は少しだけ気持ちがざわついた。

きっと、普段から決められていることなのだろう。正反対な2人を並べると、その違いは一目で分かる。

遊園地の時に芳野君が言っていた言葉を思い出す。

――いっ君は、すごい頑張ってるから……。

――人気も高いよ。

その言葉の意味は、ボールが高く上がった時点で理解することができた。

一瞬間で跳び上がった城島君はすぐにボールを弾き落とし、それはコートの1番隅にいた生徒へと的確にバウンドした。

他の生徒よりもほんの少しのワンテンポ早く、彼は動く。

館内の誰よりも高く、彼は跳ぶ。

周りをいとも簡単に追い抜いて、彼は走る。

ジャンプボールの時に向かい合わせにされたいっ君との圧倒的な差でも見せ付けるかのように、城島君は1人だけ「飛び抜けて」いた。

まるで、周りの部員達がただの初心者に見える程。

放課後にもう何度も聞いた靴底と床が擦れる音と、ボールが弾む音。

それは、大勢の部員の喧騒の中でもはっきりと私の耳へと届いていた。

「すごいでしょ、城島」

背後から呼び掛けられ、私は慌てて振り返る。

私の2列後ろに、いつの間にかTシャツ姿の井方君が腰をおろしていた。

「バスケだけじゃないよ。サッカーも、野球も、バレーも、水泳も、テニスも。
天性的な運動神経があるんだってさ」

そうなんだ、と相槌を打ち、私はまた1階へと視線を戻す。

「それと、いっ君」

井方君がそう続けるとほぼ同時に、いっ君が城島君の横をすり抜けた。

まるで、校舎の廊下を擦れ違うかのように。

ごく自然に彼は城島君の横をすり抜けて、通り過ぎる頃にはその手にボールを繋げていた。

スリーポイントラインまで駆けた彼は、立ち止まることなく大きく跳ねると、そのままボールをリングへと乱暴に投げつけた。

リングを通り抜けたボールは勢いを残して床を跳んだ。