放課後。

特別区域の掃除当番だったことを思い出し、私は体育館へと向かった。

どうせ誰も参加しない。私が参加しても後から文句を言われるだけ。

そうは分かっていても、「もしかすると」という有り得ないほどちっぽけな数字に期待をしてしまった。

担当区域は体育館の2階にある観客席なので、屋外にある非常用階段を使って2階へと入る。

既にバスケ部が部活を始めていて、階下ではボールが次々と飛び交っていた。

やがてホイッスルが鳴り、「集合!」という声が館内に響くと、1、2年生と思われる部員達が3年生と思われる制服の生徒たちの前に集まった。

まるで軍隊のように、姿勢を正して一列に立つ姿は、何となく目をそむけたくなる空気をまとっていた。

「点呼!」と怒鳴ってから、3年生は1年から順に名前を呼んでいく。

「2年、赤坂拓真」には、返事があった。

浦和一郎にも城島陽人にも芳野大地にも……。

次々と呼ばれ、部員たちは声を張って返答をしていく。

少しでも小さな声を出す人がいれば、3年生が言葉にもならないような巻き舌で怒鳴りを入れていた。

「いっ君はどうしたの?」

一通り点呼を終えた後、芳野君が館内を見渡す。

「遅れるけど出席するって言うてました」

浦和君があてずっぽうに投げられたボールを拾いながら答えるのが、微かに聞こえた。

芳野君は「またか」と答えてから、制服の3年生たちを振り返り、「いっ君、遅刻だってよ」と怒鳴る。

3年生たちは手に持っていたボードに何かを書き込み、芳野君に向かって気軽に返答をした。

「サツキ君は?」

3年生に聞かれた芳野君は、「具合悪いから遅れるってメール来た」と大きめの声で答える。

「え、大丈夫なの?また熱出た?」

心配そうに口々に言う3年たちに、芳野君は「いやいや」と笑い返す。

「またリバース」

「うっわ、キツいね。サツキ君ほんとヤワいな」

「1年の頃よりはずっと回数減ったべ」

そんなことを話しながら、3年生たちはまたボードに何か書き込みをする。

それがチェック表であるということを、私はこの時知った。