遠足から1週間もすると長袖の生徒が疎らになり始めた。

生徒たちはクーラーが入るのを心待ちにしつつ、下敷きで顔を扇ぐ。

極限までの腕まくり、制汗デオドランドを何度も服の上から吹きかけ、タオルを首から垂らす。

そんな状態のまま廊下を歩いている女子もいた。

私はと言えば元々代謝が悪いせいで特に汗を気にすることもなく、かと言って暑さが平気な訳でもなく、ひんやりとした机にうつ伏せていることが増えた。

野球部は試験1週間前に入り、昨日から練習がなくなった。

図書室に集まった馴染みのメンバーで、試験範囲の教科書を広げてかつてのノートを辿っていく。

「試験終わったら何処か遊びに行こうよ」

手を止めた梶君がそう言うと、皆が次々と顔を上げた。

「これだから優等生は……赤点って発想がないのか」

石田君が大きく溜息をつくと、彼の横で頭を抱えていた淳君が大きく頷いた。

――2人は自業自得だと思うんだけど……。

気が向かない授業はほとんどサボっていたらしくノートが虫食い状態になっている2人は、先ほどからずっとお互いのノートを見せ合ってはまとめ直しをしている。

「赤点取らない為に今勉強してるんだからもう少し前向きになれよ」

浅井君が明るく笑いながら石田君へと暗記を終えたノートを渡す。

「今頑張って勉強して赤点とったら努力が全部無駄ってことだよね。

補習でまた同じところを教えられる羽目になるんだよね」

「だからそうならない為に今勉強してるんだってば」

どこまでもネガティブな淳君の頭をめぐちゃんが軽く叩いた。

「私、範囲は一応終わったからジュース買ってくるよ」

私が席を立つと、石田君が「俺も」と立ち上がった。

「お……」と言い掛けた梶君が目を丸くし、「俺」と言い掛けた淳君がシャー芯を豪快に折るのが横目で分かった。