「雰囲気イケメンってだけで性格に魅力ないし、夏までには飽きられるんじゃないの?」

「そういう酷いこと言わないの」

めぐちゃんの額を軽く叩いてから、私は石田君へと視線を移す。

傷痕だらけの身体、何の機能もしていない片眼、接触への病的な恐怖心。

いくら顔がカッコ良くても、そのすべてを受け入れられる人なんて多くはない。

「彼女がいるって公表してないの?」

私の言葉に、石田君がようやく起き上がった。

目をこすりながら彼は不機嫌に低い声で「してないよ」と言う。

「俺の彼女さん、学校来てないもん最近……。
欠席日数多すぎて今年の進級だってギリギリだったような子だし」

眠いからなのか本気で不機嫌なのかは微妙なものの、彼の不機嫌な声には相変わらず慣れることができない。

少しだけ緊張してしまった。

「さっきのシジミ目の2年生、最近よく薫にまとわりついてない?」

めぐちゃんに言われ、淳君が頷いた。

「なんか行き過ぎてる感があるよね。
薫の下駄箱にラブレターが入ってないかチェックするのが日課って公言してるよ、あの子。
その熱意を別のところに使えばいいのに」

「ラブレターなんてそうそう拝めるものじゃないのに、天然無神経なのかな」

淳君が呆れたように言いながら、ジュースをすすった。