売店には、原価より明らかに高い値段のジュースが少しだけ売られていた。

クーラーボックスに入っているのは園内限定ドリンクばかりで、一般に発売されているものはどれもまったく冷やされていない。

普通のお茶が飲みたかった私は、少しだけ肩を落としながら高いお茶を手に取った。

レジへと向かう途中で、「綾瀬」と背後から小さな声がかかった。

店内に設置された休憩スペースに、淳君とめぐちゃん、石田君が座っていた。

石田君はテーブルに突っ伏して眠っていて、淳君とめぐちゃんはケータイゲームで対戦をしている最中だった。

「梶たちと一緒じゃなかったの」

会計を済ませてから彼らに混じって椅子に座る。

「お茶が欲しくて抜けてきた。
石田君は疲れてるの?」

私が声をかけると、閉じていた石田君の目がギョロリと私の方を見る。

もう色のない、何の機能も果たしていない方の目だった。

一瞬息を呑みかけたことがバレてしまったのか、石田君はまた目を閉じた。

「2年の女子からつきまとわれて、寿命が50年縮んだらしい」

ペットボトルにストローをさしながら淳君がボソッと言う。

一体石田君は何年生きる予定なのだろうと思いながら、相槌を打つ。

「同学年からも人気だもんね。
顔が良いし、頭も良いし、オーラあるし」

私の言葉にめぐちゃんが「ありえねー」と笑う。