ボールの弾む音とタイマーのけたたましい音と、生徒たちの怒鳴り声。

私たちは開いた扉の隙間からソッと中を覗きこんだ。

コートに出ているのは1年生と2年生で、館内に3年と思われる生徒は1人も見当たらない。

「あ、城島陽人だ」

めぐちゃんがピッと人差し指で館内を指す。

慌てて彼の指を辿って行くと、丁度城島君が高く跳び上がったところだった。

彼は受け止めたボールを空中でそのまま放り、ボールは弧を描いてシュートが決まった。

「さすがスポーツ推薦……」

私が呟くと、めぐちゃんが「だよね」と深く頷いた。

「芳野を含めなかったら2年の中では城島が断トツだよ。
入学した時から飛び抜けて上手かったし、推薦入学のお陰でずっとレギュラーだし」

めぐちゃんがそう説明している間にも城島君は館内を走り回り、ボールを自分の近くから一切離さなかった。

タイマーが鳴り、ずっと体育館の隅で試合を見ていた顧問と思われる男性がホイッスルを吹く。

「羽田!」

顧問が怒鳴ると、コートの隅に突っ立っていた1年生が慌てたように駆け寄って行く。

何か注意でもするのかと思いきや、間髪入れずにパンという音が体育館に響いた。

1年生が頬を押さえて俯く。

「やる気あんのか羽田!」

顧問から怒鳴られた男子は何も答えないまま深く一礼をすると、体育館の隅へと歩いて行く。

彼の様子を窺っていた城島君が、慌てたように男子へと駆け寄って行くのが見えた。

「バスケ部は、アレがあるから転部や退部が絶えないんだよ」

めぐちゃんが溜息をついて扉から離れた。

私もそっと体育館に背を向ける。