野球部への転部希望者はまばらとなり、部活動への本登録が行われるようになった。

3年生は引退を控えているものの、バスケ部と野球部は後輩指導の為にまだまだ秋までは部活に顔を出さなければならないらしい。

今は野球部よりもバスケ部の方が人数が多いのだと、女子たちの噂で聞いた。

「バスケ部なんて入ったってロクなことないのにね」

スクールバッグを背中に背負っためぐちゃんが、下駄箱で呆れたように言った。

彼は再びマネージャーへと戻り、最近は練習もほとんど参加していないらしい。

学習塾に通い始めたのだと4月に聞いた。

「厳しいもんね、あそこ」

「特に夏にある鬼合宿ってやつが昔っからの評判なんだよね」

めぐちゃんの言葉に私は「何それ」と笑った。

鬼だなんて、まるで漫画にでも出てくるような形容だと思った。

「綾瀬知らないの?
毎年バスケ部って長野の合宿場で1週間の合宿をやるんだよ。
寝る時間がほとんどなくてバタバタ部員が倒れるってやつ、かなり有名だよ」

「あー、あの1年生は最後まで起きてて朝の支度もすべてやるってやつ……」

梶君から聞いたのを思い出して言うと、めぐちゃんが真面目な表情で頷く。

「それだけじゃないんだよ。
水が支給されるんだけど、学年順に飲むことになっていて、休憩時間には1年生の分なんて残ってないんだって。
あともっと有名なのが夕食のバイキングなんだけど……」

体育館へさしかかった時、めぐちゃんがパッと足を止めた。