始業式は体育館で行われることになっている。

移動のアナウンスが流れ、私たちはゾロゾロと教室から出た。

「どうする淳君」

私が言うと、淳君は無言で階上を指さした。

私たちは生徒たちの波に紛れてまったく違う通路へと出て、そのまま屋上へと向かった。

立ち入り禁止とされていたこの屋上を開けたのは、高校1年生の春のことだった。

私は高校生活の大半をこの屋上で過ごしてきた。

教室で馴染めなかった時も、他クラスの生徒と仲良くなってからも、ずっと。

扉を開けると春の風が顔に当たった。

既に屋上メンバーは全員来ていて、思い思いの場所に腰をおろしていた。

「風野と淳、Aクラスだったんだ」

パッと顔を上げた梶君が私たちを見比べて言う。

「うん、国立希望出したから自然にね……」

答えながら、私は梶君の横へと腰を下ろした。

淳君は、みんなから離れて給水塔の下に1人で座った。

「野球部はみんなCクラス?」

めぐちゃんに訊ねると、彼は頷いた。

「俺と梶君と浅井君と井上君はC。で、薫だけBなんだよな」

めぐちゃんに話を振られた石田君はパッと顔を上げて、私たちを見渡す。

「そうだね」と笑うと、石田君はすぐにまた俯いた。

「受験生とか実感湧かないな」

梶君の言葉に私は同意した。

この学校で過ごすのがあと1年だと思うと、少しだけしんみりともしてしまう。

「受験が終わったら卒業で、みんなバラバラになるんだよね」

自分で言っておいて、その言葉はやけに寂しいものだった。

楽しかったかと言えば分からないけれど、たくさんのことを学んだと思う。人生を変えられるような経験がたくさんあって、それまで培われてきた価値観だとか考え方すべてを塗り替えられた。

この高校で初めての仲間ができて、初めての彼氏ができて、初めて幸せを知った。

鳴り響くチャイムの音を聞きながら、ソッと目を閉じる。

――残りの1年が幸せなものとなりますように。

神様でも自身でもなく、私はそう誰かにお願いをした。