昼休み。

パタパタと相変わらずな足音を立てながら駆け寄って来る城島君に、梶君が軽く顔をしかめた。

「城島、上履きの踵踏むな。
階段とかで転ぶから」

城島君は自分の上履きを見下ろして、無意識だったのか慌てて踵を立て直す。

「先輩、2年と3年が今月の遠足一緒だって連絡聞いた?」

城島君は上履きを直すついでにさりげなく腰を屈めて私たちよりも目線を下にする。

「うん、今朝のHRで連絡があったよ」

私が答えると梶君も頷く。

「遊園地なんて俺小学生以来かも。
バスケ部の2年生みんなで回ることになったから、もし見かけたら声かけてよ」

満面の笑顔で言われてしまい、私もこのタメ口にツッコむのを諦めた。

――私たちは一昨年も遊園地だったんだけどなぁ……。

そんなことを思い出しながらも、私は城島君の肩を引っ張る。

「毎回屈んでもらわなくても大丈夫だよ。
ずっとそんな体勢じゃ腰痛くなるでしょ」

私が言うと、城島君は姿勢を伸ばして「大丈夫だよ」と笑う。

私たちを横目で見ていた梶君が、小さく鼻をすすった。

彼は城島君の腕を引っ張って自分へと引き寄せると、城島君の制服の匂いを嗅ぐ。

「城島、さっきの授業って調理実習か化学だった?」

城島君は「え?」と聞き返しながら梶君を見下ろす。

「英語だったけど、何で?」

梶君は眉根に皺を寄せながら「何でもない」と言った。