「弱点かは分からないけど、あいつ2年の学年末試験で全教科0点だったよ」

私が悶々としている間に、梶君が思い出したように言った。

「え、嘘!」

女子たちだけでなく傍で話を聞いていた野球部のメンバーたちも一斉に振り返った。

「全教科白紙で提出したんだって。
それで追試を受けることになったんだけど、追試でも全教科白紙で提出して、その結果留年したって……」

さすがに初耳な話だったので、私も唖然としてしまった。

出席日数も成績も素行も別に問題はなかった彼がどうして留年なんてしたのだろうとずっと気になっていたけれど、まさかそんなことをしていたなんて。

「それって、自分から留年したようなものじゃん……」

めぐちゃんの言葉に場の空気が完全に凍り付いた。

――え、わざとなの? あれ……。

留年が決定した際、他の留年決定者たちが半泣きになって机に突っ伏している中、芳野君だけ飄々としていたのを思い出す。

他の生徒たちは保護者を引きつれて留年の取り消しを求めていたものの、芳野君にはそういう必死さがまったくなかった。

「さすがに脅しには使いにくい話だね……」

割と良心的だった女子たちは互いに顔を見合わせると、私たちからそそくさと離れて行った。