教室前方の黒板に貼り出された席順を確認し、私は窓際後方の席へと腰を下ろす。

私の前にはもう見慣れた背中がある。

私が登校してきたからと言って「おはよう」とも言わなければ顔すら上げてくれない……そんなドライな男子が目の前には座っている。

「淳君、おはよう」

私が小声で声をかけると、彼は読んでいた雑誌をパタンと閉じて私を振り返る。

「3年間同じクラスだったね。しかも席も一緒。すごい偶然」

私が笑い掛けると、淳君は「そうだね」と低い声で呟いて、また前へと向きなおろうとする。

その肩を慌てて私は掴んだ。

「みんなと離れちゃってちょっと寂しいよね。ほら、めぐちゃんとか」

私がそう言うと、淳君は小さく眉根を寄せた。

「綾瀬の彼氏もCクラスだもんね」

またボソッと言うと、淳君は今度こそ前へと向きなおった。

「別クラスでも昼休みとか放課後に会えるから全然いいんだけど……」

少しムッとして言い返してみたけれど、淳君が聞いていたかは分からない。

辺りを見渡すと、やはり見覚えのない生徒ばかりだ。

淳君くらいしか話す人もいないのだから、もう少し相手をして欲しかった。

これからどんな1年になるのだろうかと机に突っ伏して溜息をついた。