「家でも、そういう感じなの?」

私が訊ねると、石田君は首を振る。

「全然。普通にいいお兄さん」

保健医さんから渡されたプリントを裏返し、石田君は持っていたペンで人の名前をサラサラと書いていく。

そこに書かれた名前がひまわりの家の住人たちだということにしばらくしてから気付いた。

「3年生の中でも芳野が1番誕生日が早いし、あいつすごい早い段階であの家に来てるから、しっかりしてるっていうか面倒見がいいんだ。
特に可愛がっているのが1学年下の井方サツキ」

ペンを井方と書かれた場所へと滑らせて、石田君が言う。

「サツキと大地は部屋も一緒だし、家の中でもずっと一緒にいる。
部活も同じバスケ部だから、合宿の時とか試合の時は2人ともずっと一緒に行動してるんだよ」

「あの家の部屋って、1人1部屋じゃなかったっけ?」

以前淳君から聞いたことを思い出して言うと、石田君は頷く。

「原則はそうなんだけど、あの2人は特別なんだってさ。
大地は長くいるし、サツキは来た時からずっと大地に面倒見てもらっていたから、今さら部屋を分ける必要もないし……」

そこで言葉を切って、石田君は保健医さんを見上げた。

椅子に座ってパソコンを打っていた保健医さんは笑顔のまま首を横に振る。

――何を話していたんだろう。

先程のことが気になったものの、私は気付いていないフリをした。