石田君は保健室のソファに座っていちごオレを飲んでいた。

飲食禁止と一応は張り紙がされているものの、他に生徒がいないからか保健医さんも別に注意をするつもりはないらしい。

「授業始まってるよ。教室行かなくていいの?」

自分のことを棚に上げて平然と言う石田君に呆れながら、私は「自習だから」と答えて彼の隣りに座る。

「石田君は相変わらずサボりなんだね」

私が言うと、何の悪びれも含まれない「まぁね」という言葉が返って来た。

「風野さん、石田君は一応仮病じゃなくて……」

保健医さんが横から口出しをしようとするのを、石田君が「言わなくていいから」と止める。

「石田君って、芳野大地と同じ家から通ってるんだよね?」

私が訊ねると、石田君はストローを口から離して頷く。

「芳野君って、どんな人なの」

私が訊ねると、石田君は「なんで」と笑いながら言う。

「さっき部活の後輩と話してるとこ見たんだけど、去年と随分印象が違ったっていうか……」

「あ、大地はバスケ部だもんね」

石田君は思い出したように言い、またストローを口へと入れる。

ストローを噛む癖があるらしく、先端の1センチにそっと犬歯を立てた。

「極端に言えばいじめっ子の部類に入るんじゃないかな。

思いやりとか優しさとか気遣いとか、そういうものを持ち合せてない人だよ」

――いじめっ子……。

明るい彼には不似合いな言葉だと思ってしまった。