2年Bクラスの扉を開けると、丁度近くの席の生徒と目が合った。

「バスケ部の城島君っているかな」

梶君に言われた生徒は教室を直ぐに見渡して、「城島―」と怒鳴る。

すぐに教室のどこかから返事が聞こえ、立ち上がった茶髪の男子がパタパタと足音を立てて入口へとやって来る。

「3年の先輩たち」

生徒が私たちを手のひらでさすと、茶髪の彼は「え」と一瞬だけ低い声を上げて、私たちを振り返った。

目にかからないように適当に結わえられた茶髪と、耳に光るピアス。都会的な顔立ちにスッとした長身……。

「君、昨日の……」

私が言うと、男子はパッと表情を明るくさせた。

「てっきり部活の先輩が来たかと思ってびっくりした」

城島と呼ばれた彼は明るく笑うと、廊下まで出て来て教室の扉を素早く閉めた。

「名前、城島君って言うんだ」

私が梶君の持っている名簿を見ながら言うと、彼は笑顔で大きく頷いた。

「昨日名前言うの忘れてたもんね。
城島陽人です」

城島君はそう言いながら、少しだけ姿勢を屈めた。

私と梶君を見下ろすのを申し訳ないと思ったのだろうか、視線が丁度同じ高さになる。