木山君が苗字を変えたのは昨年の秋のことだった。

実家を離れてひまわりの家へと住むことになり、苗字は大家さんのものをもらったそうだ。

家を出た理由が、「やっぱり家族とは思えなかった」というもので、淳君も家族も当初は唖然としたらしい。

「いなくなってくれて清々したんだけどね……。
あいつ家事なんて何一つできなかったし、むしろ邪魔だったっていうか。
俺も兄弟だとか思えてなかったところあったし」

ピアスの穴を触りながらそう言う淳君が少しだけ可哀想に思えた。

私が何か言葉をかけようとして時だった。

廊下からパタパタと足音が聞こえてきた。

淳君がパッと立ち上がって教室後方の扉から廊下を見る。
「君、ちょっと待って」

淳君がそう言うと、足尾とはぱたりと止む。

どうしたのだろうと思い、私も席を立って廊下へと出って行った。