翌朝。

ざわつく教室へ入ると、既に淳君は来ていた。

私が席に着くのを見計らって、彼は自分の机の中から紙束を取り出して手渡して来る。

「昨日の試験返却、いなかったから」

全教科分の試験結果に目を通し、私はホッと胸を撫でおろす。

「綾瀬って、推薦受けるの?」

淳君に小声で聞かれ、私は「なんで」と訊ねた。

「定期試験に必死になってる割に、業者試験にはこだわってないから……」

「よく知ってるね」

そう答えながら、私は視線を机へと落とす。

国立大クラスへ入ったのは、流されてのことだった。
成績優秀者なのだから国立大クラスだろうと昨年度の担任に言われ、両親も当然のようにこのクラスへと志願書を提出してしまった。

具体的に行きたい大学がある訳でも専門的に学びたいことがある訳でもない私は、それが苦痛であったし、何よりこれ以上優等生を続けるというのも嫌だった。

「まだ家族にも相談してないし、決めたって訳でもないけれど……」

試験の結果を見ながらそう答える。

満点や90点代、悪くても80点は越える自分の試験結果を見ていると、推薦で妥協をするよりも高みを目指しても良いような気がしてくる。

けれど、この学校の中での1位が受験において何の意味もなさないことくらい、私もよく分かっていた。

淳君に指摘された通りだけれど、業者試験での私の結果は散々のもので、国立大はほとんどがD判定となっていた。

これから頑張って巻き返せるようなものではないということくらい、私でも分かる。

淳君が「そう言えば……」と言い掛けた時、チャイムが鳴った。

担任が入って来て、すぐに号礼が掛かる。

慌てて私たちは席を立ち、会話は中断されてしまった。