「滑り止めで受けた冗談みたいな高校だから、10番以内には入りたかった」

つまらなさそうに言うと、彼は2年の貼り出しへ手を伸ばし、乱暴に壁から引き剥がした。

紙の破れる音が廊下に小さく響いて、私はギョッとする。

いっ君はグシャグシャと紙を丸めると、足元へ転がしてそれを強く踏み潰す。

「優等生の風野先輩に、こんなこと言うても理解してもらえないだろうと思いますけど」

卑屈にそう言うと、彼は廊下の奥へと歩いて行ってしまった。

身体のあちこちを飾るアクセサリーの音を響かせて、ムスクバニラの香りを残しながら。

踏み潰された40位までの成績を見下ろして、私は胸が絞め付けられた。

理解ができなかったらどれ程幸せだっただろうかと思う。

自分の力量に見合わない結果を突き付けられた時の絶望は、私でも知っている。

中高一貫校でイジメを受け、受験勉強もロクにできないまま高校受験に挑み、その結果県内1の底辺校と言われる松林高校に辿り着いたのだ。

小学校時代必死に勉強をし、中学でも真面目に良い成績をとり続けても、その努力は一切報われず、「こんなはずじゃなかった」なんて負け犬じみた台詞を何度も呟いてきた。

――14位は、すごいことなんだよ……。

試験週間になってもずっと練習をしていたバスケ部を思い出す。

いつ勉強をする暇などあっただろう。

家に帰ってから徹夜で必死に頑張ったかもしれないし、登下校の最中は参考書を手放さなかったかもしれない。

練習のちょっとした合間に暗記に取り組んでいたのかもしれない。

悔しがる程勉強ができただけでもすごいじゃないかと思った。