皆と別れたのは4時少し過ぎ、モールから随分と離れたあの駅でだった。

私は梶君と一緒に電車に乗った。

電車の中はガラ空きで、私たちは少し距離を置いた隣り同士になる。

彼と肩を寄せ合って座ったことが一体何回あっただろうかと思いながらも、さりげなく手を伸ばすことすらできなかった。

整った横顔はやけに大人びていて、まだ幼い私を寄せ付けないようだった。

試験の後の疲れからか、少しだけ惚けた意識の中、私はそんなことを考えた。

――高校を卒業したら、離れ離れになる。

もっと早くに出会えれば良かった。

中学の3年間がなければ良かった。

一緒にいられる時間があとわずかだと思えば思うほど、たくさんの後悔が浮かんで来る。

私は梶君のことを半分の半分すら知ることができなかった。

彼の好き嫌いも、家のことも、普段読んでいる雑誌も、趣味も……。

私は誰よりも梶君のことを知らないような気がした。

「大学受かったらさ……」

梶君の声が耳に届き、私は我に返った。

彼は窓の外へと視線をやったまま、言葉を続ける。

「風野との思い出が欲しい、です」

震えた小さな声を、私は聞き逃しそうになった。

「思い出?」

聞き返すと、梶君は私へと視線を移し、小さく頷いた。

「意味、分かるかな……」

そう言われ、私は口を噤んだ。

それが何を意味するのか、何となく察しはついた。

まるで別世界かのように眺めていたドラマや漫画のワンシーン。

それを梶君が私に期待をしているのだと知って、頭が真っ白になる。

「受かったら、ね」

私が言うと、梶君は薄っすらと笑みを浮かべた。