美味しそうにスイーツを食べていた赤坂君も、半分ほど食べたところでフォークを置いた。

「井方君、手伝おうよー……」

不満げに言う彼を井方君は呆れたように眺めていたものの、やがて面倒くさそうにフォークを手に取ると、まだ手の付けられていないティラミスを自分の方へと引き寄せた。

一口が大きい井方君は、すぐにティラミスを食べ切ると、プリンも自分の方へ寄せ、フォークを刺す。

彼の正面に座った赤坂君は、暫くジッと井方君を見ていたものの、やがて椅子に靠れかかった。

「わん子まで来ないなんて、つまんないよな」

呟いた赤坂君に未開封のおしぼりを軽く投げて、井方君は最後の一口を食べ終える。

「いっ君来ないのにわん子だけ来るってこともないだろ」

両手を合わせて小声でごちそうさまと言い、井方君は席を立つ。

その時ようやく彼は私たちに気付いたらしく、目を丸くした。

「城島も別行動してたし、意外に自由なんだね」

石田君が声をかけると、井方君は「まぁ……」と言葉を濁して肩を竦めた。

「城島って何処にいた?」

井方君に聞かれた石田君は「フードコート」と答え、自分の残したパフェを淳君へと押しつける。

淳君は嫌そうに顔をしかめながらもフォークを持ち直した。

「薫さん、俺、今日は帰りが遅くなるから。大地にも伝えておいて」

井方君はそれだけ言うと、赤坂君と一緒にレストランを出て行った。

「やっぱり顔が良いと高校生活も充実するものなんだね」

感心したようにめぐちゃんが言う。

「そうでもないと思うけど……」

井方君を見送りながら、石田君は小声で呟いた。