「あの子たち2年生……?」

梶君に聞かれ、私はおずおずと頷く。

「梶君とか石田君とか芳野君辺りを狙ってるみたい」

私が言うと、彼は小さく笑った。

「芳野はまだしも俺も石田も彼女いるのにねー」

「石田君が彼女できたって話、あれ本当だったんだ……。
私未だに紹介してもらってないよ」

つい先日話した片眼王子のことを思い出して私が言うと、梶君はまた小さく表情を崩して笑った。

「あいつと同じ家に住んでる子だよ。
去年同じクラスだったじゃん、安藤千尋っていう、ちょっと吃音がある子」

安藤千尋という女子の名前はすごく聞き覚えがあって、すぐに顔も思い浮かんだ。

「風野に似てる」と周りに言われている子で、私も実際彼女のことを少しだけ似ていると思ってしまった。

ひまわりの家という共同住宅で生活している女の子で、華はないけれどいつも男子たちから壊れもののお姫様のように扱われていた。

「この高校ってひまわりの家から通ってる生徒多いんだよね」

数名の知り合いの顔を思い浮かべると、梶君は小さく頷いた。

「あそこの大家さんがここの出身だから、子供たちを松林に入学させてるんだって。
石田と安藤さんと、鈴木もそうだったかな……あとバスケ部にも2人」

梶君が指を折りかけて小さく息を呑んだ。

「芳野も確か、そうだったと思う……」