最上階にあるファミリーレストランは空いていて、すぐに奥の禁煙席へと通してもらうことができた。

梶君が慣れたようにおしぼりを配り、めぐちゃんも当たり前のように全員分の水をとりに行った。

自分の気が回らなかったことを一瞬悔やんだものの、梶君からおしぼりとメニュー表を渡されると、そんな後悔も直ぐにかき消された。

「めぐ、お前なんでそんなにガツガツ食べて太らないわけ」

国産和牛のハンバーグと特製ナポリタン、そして伊勢エビグラタンを平然と平らげるめぐちゃんを、彼の隣りに座った淳君が気持ち悪そうに眺めていた。

「おまえら兄弟こそ何で小食のクセにそこまで背伸びたんだよ」

めぐちゃんに言い返された淳君はムッとした表情を浮かべ、私の横に座った石田君へと視線を移す。

トールサイズのイチゴパフェを黙々と食べていた石田君は、視線に気付くと面倒そうに顔を上げた。

「遺伝じゃないかな、多分……」

短く答えてまた石田君がパフェへとフォークを刺そうとした時だった。

隣りのテーブルに座っていた男子がベルを鳴らし、店員さんを呼びつけた。

「チョコレートソースのパフェと、フルーツ添えパンケーキ、あとティラミスと、ジャージー牛プリンと、三色アイス」

ツラツラと聞こえてくる注文に、皆が硬直する。

聞いているだけで胸やけしそうになりながら、隣りのテーブルを恐る恐る窺う。

先程ボーリング場で見かけなかった赤坂君が、店員さんに「以上で」と笑うところだった。

彼の正面には店内にも関わらず帽子を目深にかぶった井方君が突っ伏しており、寝ているのか死んでいるのか分からないほど静かに沈んでいた。

店員さんが去った後、赤坂君は沈んでいる井方君を軽くつつく。

「井方くーん。
俺またいっぱい頼んじゃったから手伝ってくれないかな」

自分を突く赤坂君の指を軽く払い、井方君はゆっくりと顔を上げた。

「もう無理だって!
自分で食べ切れる分だけ頼めよ!」

珍しくもっともすぎることを言い、井方君は片手で軽く腹部を押さえる。

「でも井方君、皆と一緒に騒ぐより俺とお菓子食べてる方が楽しいんでしょ?」

運ばれて来た三色アイスにフォークを突き刺しながら赤坂君が笑うと、井方君は疲れたようにまたテーブルに突っ伏した。

「アクティブに遊びまわるのは嫌だけど!
スイーツを食べまくりたいとか言った覚えはない!」

テーブルを空いた手でバンと叩く井方君にお構いなしに、テーブルの上には注文した分のスイーツがどんどん運ばれて来ていた。

「すごいな、あの子……」

口をあんぐりと開けたまま梶君が呟くと、完食しためぐちゃんが「そう?」と首を傾げた。