最上階にあるボーリング場へ行くと、既にバスケ部の2年生たちが2コースを陣取っていた。

ソファに座って大声で喋っている彼らをそっと盗み見たものの、城島君や井方君など、話したことのある生徒は1人もいなかった。

「こうして見ると本当柄悪いよね、バスケ部」

浅井君が感心したように言うと、皆は深く頷いた。

私たちのコースは彼らとかなり離れた場所で、両隣りは家族連れだった。

荷物をまとめた場所に置き、素早くソファに腰を下ろす。

「風野ってボーリングやったことある?」

横に座った梶君に聞かれ、私は素直に首を横へ振る。

「じゃあカラオケとかは?」

梶君の横に座りながら浅井君が訊ねてきたので、私はもう1度首を横へ振った。

「やっぱりお嬢様なんだ、風野さんって」

感心したように言った浅井君の脇を、梶君が「バカ」と言って小突く。

「友達がいなくて誘われなかったって話だよ!
察してやれよ!」

梶君なりに小声で言ったつもりなのだろうけれど、私の耳にその言葉はハッキリと届いてしまった。

梶君と浅井君の言葉が悪いのは以前からなので、今さら腹を立てることもない。

ただ、少しだけ呆れて苦笑いを浮かべてしまった。

「淳も経験ないだろ」

ソファに深く座り、ケータイを弄りながら、石田君がボソッと言う。

彼の隣りに腰をおろしていた淳君は、返事をせずに私へと視線を泳がせて来る。

「持ち方は野球と同じで。人差し指と中指で持って、親指で支える……」

浅井君が持って来たボールを片手で触りながら適当極まりない説明を石田君がする。

ボールをそっと手渡された淳君は、石田君に言われた通りにボールを持とうとし、手を極限まで広げ、大きく顔を顰めた。

――嘘だって気付いて!

心の中でエールを送りつつ、私も浅井君からボールを受け取る。

「この穴は何」

淳君に訊ねられた石田君は、「飾りもの」と真顔で答え、ケータイをポケットにしまう。

「俺、飲み物買って来るけど。
何か欲しいものある?」

石田君が中腰で言うと、梶君たちはそれぞれ好きなものを言っていく。

「石田君、私も一緒に行くよ」

私が立ち上がると、石田君は私を一瞥し、「ありがと」と短く言った。