「風野先輩って、梶先輩の何なんですかー」

下級生2人から声を掛けられたのは、木曜日の放課後のことだった。

先日ヒソヒソと言って来た2年生ちだと分かり、私はムッとしながら足を止めた。

「小学校が同じだったから、仲良いけど。何ってなに……」

私が言い返すと、彼女たちは不快そうな表情のまま顔を見合わせる。

「風野先輩っていつも男子と一緒にいるし、別に梶先輩じゃなくてもいいんじゃないですかー。
他にいい人とかいるんじゃないですかー」

いねぇよ……。

内心そう思いながらも、ここでキレたらだめだと思った。

私が背にしている体育館からはボールの弾む音と怒鳴り声が聞こえて来ていた。

みんなが部活をしている中私は何でこんなアホを相手にしなければならないのだろう。

「別にいつも男子と一緒なわけじゃないから。
あなたたちが男子のことばかり追っているからそういう風に見えるんじゃないのかな……」

言葉を選んで言ったものの、少しキツかったかもしれない。

片方の女子が目に涙を浮かべた。