ノスタルジア






「植物状態だったキミを、僕は誘拐した。



目を醒ましたとき、



そこにいるのはアヤノじゃなく



キキなんだって知っていたから。






眠っているだけのキミを誘拐して



あの小さな家に2人だけの



世界を造った。





キミが目を醒ましたとき、



何にも怯えなくていいように。



キミが僕だけを見てくれるように。







心のどこかで期待してたんだ。



もしかしたら、きっと目を醒ますのは



キキじゃなくてアヤノなんじゃないかって。






そうだったらいいのにって」








力の入った澪の濡れた指が、じゃりじゃりと沙を絡めとる。




水滴がポタポタと、濡れた髪から落ちる。