「なぁ、知景。俺のやりたいようにやれって言ってくれたよな」 「あ……あぁ」 「お前は俺を馬鹿だと思うか?」 「急に何だよ……」 「いいから、教えろ」 眉をひそめて、宙を見ながら少し考えた彼。 だけど、答えはすぐに出たようで。 「言っちゃあ悪いが……ときどき馬鹿だと思う」 怒られるの思ったのか、仔犬のような目でそう言った知景に思わず吹き出す。 「……馬鹿上等」 ぽつりとそう呟いて、俺は立ち上がった。 彼女に握られた手は、繋いだまま。